194. 心筋細胞のサルコメアは「1カ所ずつ」連携を切り替える — 局所的な同期の切り替えは、広がりの異なる長さ再配分と結び付く —

研究者

研究者:新谷正嶺 中部大学 生命健康科学部 生命医科学科

心臓の拍動は規則的に見えるが、その内部で直列に並ぶサルコメア(筋肉の最小収縮単位)が、どのように協調しているかは十分に分かっていなかった。新谷は、生きた新生仔ラット心筋細胞を約41℃まで局所的に温めたときに現れる高頻度サルコメア自励振動(HSOs)を用い、各細胞で連続する5個のサルコメア長を高速再解析した。その結果、隣接サルコメアの関係は、多くの場合、4つの隣接関係のうち1つだけが変わる「1リンク切り替え」として更新されることが分かった。さらに、同じ切り替えでも、相対的な短縮と伸長の再配分は近くで完結する場合もあれば、観察した5サルコメア鎖の広い範囲に及ぶ場合もあった。しかも、切り替え前に同じタイミングで動く隣接ペアが多いほど、この再配分の広がりは大きくなった。これらの結果は、分子モーターの確率的な動きと、細胞全体の安定した拍動の間に、複数サルコメア規模の協調過程があることを示している。

<図の説明>

同じ1リンク切り替えでも、長さ再配分の広がりは異なる

図の上半分は、連続する5個のサルコメアで同じ「IAAI→IAII」の1リンク切り替えが起きた2例である。S1~S5は5個のサルコメアそれぞれを表す。各例の上段はサルコメア長、中央は4つの隣接ペアの状態(黄=同位相I、濃青=逆位相A)、下段は切り替え前後の相対的な長さ変化(橙=相対的伸長、青=相対的短縮)を示す。縦破線は切り替え時点、赤枠はAからIに変わった1カ所を示す。左では短縮側と伸長側が近く、補償到達距離はS=1.29である。右では両者が観察した5サルコメア鎖の広い範囲に分かれ、S=2.88である。赤い両矢印は再配分の広がりを直感的に示す補助表示であり、Sは5位置すべての相対的短縮・伸長の大きさを用いて算出した。下半分左は、補償到達距離を計算できた248件の1リンク切り替えにおけるSの分布で、黒線は中央値を示す。背景色は、隣接型、鎖内拡大型、観察した5サルコメア鎖をまたぐ型の記述的区分である。下半分右は、切り替え前のIリンク数が多いほどSが大きい傾向を示す。灰色点は各イベント、箱ひげ図は分布、橙線は各群の中央値を表す。